
目からウロコの「男の子」育て
私は、心療外科医です。心療外科というのは、身体の外見に対するコンプレックスを、ときには心理的カウンセリングで、また必要なら形成外科的な手段で、解消しようとする医療分野です。
「顔のアザが恥ずかしい」「目つきがきつくて友達ができない」「毛深いのが気になる」「体臭で人に迷惑をかけている」といった身体像の悩みは、心と身体の発達がアンバランスな思春期の子どもたちに消極的な自己イメージを植えつけることがあります。
その中でも、私の診察室では、女の子では「体臭」や「多汗」の悩みが多く、男の子では、なんと「自分の性器は異常ではないか」といった性の悩みが近年急増しているのです。
いわゆる「包茎コンプレックス」です。包茎の悩みは、当院だけでなく、さまざまな思春期電話相談のデータでも常に上位を占めています。
大人にとっては、たかが「皮かむり」程度のささいなことでも、思春期の多感な男の子にとっては、人生の一大事です。性の悩みは、解消されずに潜在化して、性格までゆがめてしまう傾向があります。私は、最近の日本の若い男性が女性に比べて元気がないのは、このような包茎コンプレックスにも一因があるのでは、と内心感じています。
包茎は予防できます。
ところが、このような事実を、当の親が知らないことが多いのです。特に問題なのは、同性の親、つまり父親が自分の息子の性に関心をもっていないことです。必然的に、「息子育て」のカギは、もうひとりの親である母親が握っていることになります。
しかし、お母さんにとって、異性である男の子はまさに未知の存在です。その母親に、「思春期の男の子の性の相談相手になれ」といわれても、無理な相談です。
でも、赤ちゃんから大人の男になるまで、息子さんのオチンチンの成長を「見守る」ことなら可能でしょう。「思春期になる前までの性のしつけをしてください」といわれたら、できない相談ではありません。母と息子は、異性であっても生物学的にはまぎれもなく親子なのですから。
この本は、男の子がオギャーと産声をあげたときから、立派に“元服”できる日まで、母親が男の子の「性の成長」とどう向き合うか、という観点で書かれています。
人格の成長は、オチンチンの成長と表裏一体です。
むしろ、男の子は「性長なくして成長なし」なのです。
お母さんが、「オチンチン育て」というもうひとつの子育てに気づいたとき、それは、不安だらけで気が遠くなるくらい長い「男の子」育てという大航海を終着点まで安全に導いてくれる「海図」を手に入れたようなものです。
この本を、そのような「海図」として利用してくださるのならば、お母さんの目前には、まさに「目からウロコの『男の子』育て」という大海原が広がってくることでしょう。


